石丸行政書士事務所

石丸行政書士事務所 > 記事一覧 > 判断能力が低下したらどうなる?相続財産の対象になるもの・ならないものと後見制度の役割

判断能力が低下したらどうなる?相続財産の対象になるもの・ならないものと後見制度の役割

記事一覧

相続が発生した際、「何が相続財産になるのか」を明確に理解しておくことは重要です。
とくに本人の判断能力が低下してから後見制度を利用した場合、その管理財産が相続にどう関係するかは混乱を招く要因になり得ます。
この記事では、法定後見・任意後見と相続財産の関係を踏まえながら、対象となるもの・ならないものを整理します。

相続財産に含まれるもの

相続財産の対象となるのは、被相続人が死亡時点で有していた「プラスの財産」と「マイナスの財産」です。
代表的なものとしては以下があげられます。

・不動産(土地・建物)
・預貯金
・有価証券(株式や債券)
・自動車などの動産
・貸付金などの債権
・借金や未払い金などの債務

これらは、法定後見人や任意後見人が管理していたものであっても、被相続人の財産であることに変わりありません。
したがって、後見制度を利用していたか否かに関係なく、これらは相続の対象になります。

相続財産に含まれないもの

一方で、相続財産とならないものも存在します。
たとえば、以下のようなものです。

・生命保険金(受取人が指定されている場合)
・死亡退職金(支給先が指定されている場合)
・祭祀財産(仏壇・墓地など)
・個人的性質を有する権利(年金受給権、扶養請求権など)

生命保険金や退職金などは、あくまで「受取人固有の権利」であり、相続財産には含まれません。
また、成年後見人が関与していた財産であっても、その性質により相続対象外となる場合があるため、注意が必要です。

法定後見制度と財産管理の影響

法定後見制度では、判断能力が低下した後に裁判所が選任した後見人が財産を管理します。
後見人は、財産の処分や契約行為について家庭裁判所の許可を得る必要があるため、管理は厳格に行われます。

しかし、後見人が管理していた財産は、被相続人名義である限り、そのまま相続財産として扱われます。
後見制度を利用していたことで、財産の出入りや内容が明確になっているケースが多く、相続時の調査がしやすい点は利点といえます。

任意後見制度と相続との関係

任意後見制度では、本人の判断能力があるうちに信頼できる人と契約を結び、将来の財産管理を委ねます。
任意後見人は、本人の希望に沿って柔軟な対応が可能ですが、後見の開始後は裁判所の監督がつきます。
任意後見人が管理していた財産も、被相続人の所有である以上、当然に相続財産に含まれます。
ただし、契約内容によっては財産の使途に制限が設けられている場合もあるため、契約書の確認が重要です。

まとめ

相続財産の対象になるか否かは、財産の種類や契約の内容により判断されます。
後見人が管理していた財産も、本人の名義である限り、原則として相続財産に該当します。
法定後見・任意後見ともに、相続人にとって財産内容の把握や整理を行う上で有効な手段となります。
判断能力があるうちに、後見制度や財産の取り扱いについて準備をしておくことが、相続時の混乱を防ぐ鍵になります。
不明点がある場合には、行政書士などの専門家に相談して自身の状況に合った対策を検討することが重要です。