高齢化社会を迎える今、自分の判断能力が低下したときや死後の財産分配に備える必要性が高まっています。
その対策として注目されているのが、公正証書遺言と後見制度です。
中でも、法定後見や任意後見との違いを理解し、公正証書遺言を活用することが安心につながります。
法定後見制度は、認知症や病気などで判断能力が低下した人を支援する制度です。
家庭裁判所が後見人を選任し、財産管理や契約手続を代行します。
本人の保護を目的とした制度ですが、後見人は裁判所の判断により選ばれるため、希望どおりの人が選ばれるとは限りません。
また、後見人に専門職が選ばれると、毎月報酬が発生することが一般的です。
本人の意思が反映されづらく、柔軟な財産管理も難しいケースがあります。
任意後見制度は、判断能力があるうちに、将来の後見人を自ら選び契約しておく制度です。
契約は公正証書によって作成され、実際に判断能力が低下した段階で家庭裁判所へ申立てを行い、効力が発生します。
この制度の強みは、自分の意思で信頼できる人を後見人に選べる点にあります。
ただし、監督人の監督下で行われるため、一定の制約があり、自由な財産活用が難しい場合もあります。
公正証書遺言は、公証人が作成に関与する遺言で、法的効力が高いのが特徴です。
自筆証書遺言のような偽造・紛失のリスクがなく、家庭裁判所の検認も不要です。
また、後見制度では死後の財産分配は行えませんが、公正証書遺言を残しておけば、「誰に」「何を」遺すかを明確にできます。
結果として、相続人間のトラブルを未然に防ぎ、本人の意思を確実に反映させることが可能です。
任意後見契約と公正証書遺言は、公証人が関与して作成されるため、法的信頼性が高く、組み合わせて活用することで安心感が増します。
生前の支援は任意後見、死後の意思の実現は公正証書遺言という役割分担が可能です。
一方、法定後見制度は判断能力が低下した後に使う制度であり、緊急時の対応としては有効ですが、本人の希望が反映されにくいという限界があります。
法定後見制度は必要に応じた保護が受けられますが、意思の反映という点では限界があります。
任意後見と公正証書遺言をあらかじめ準備しておくことで、自身の意思を生前・死後ともに確実に残すことが可能になります。
相続トラブルの予防や老後の安心のためにも、判断能力があるうちに信頼できる行政書士などの専門家に相談し、適切な対策を検討することが大切です。